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東京科学大学 理学院  化学系
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Organic chemistry reference resolverCreated by Oleksandr Zhurakovskyi

減圧蒸留の友

(2d) 既存の石油化学プロセスを改革しうる均一系触媒反応開発

(2d-1) 二酸化炭素の水素化によるギ酸の合成
ギ酸は防腐剤・殺虫剤・皮革なめし材料として利用され、工業的にはメタノールを用いて一酸化炭素と水から二段階の行程を経て年間約40万トンのスケールで合成されている。毒性の高い一酸化炭素を使用する方法に変えて、二酸化炭素を水素化することでギ酸が合成できれば、工程数の短縮にもつながる。我々は図に示したPNPピンサー型三座配位子を有するイリジウム触媒を用いることで二酸化炭素の効率的な水素化反応を達成した。その触媒回転数は最高で3,500,000に達し、世界で最も高活性な二酸化炭素の水素化触媒である。

1) Tanaka, R.; Yamashita, M.; Nozaki, K. J. Am. Chem. Soc. 2009, 131, 14168-14169. doi
2) Tanaka, R.; Yamashita, M.; Chung, L. W. ; Morokuma, K.; Nozaki, K. Organometallics, 2011, 30, 6742-6750.   doi

(2d-2) アルケンからの触媒的ヒドロホルミル化・水素化による脂肪族直鎖アルコール合成法の開発

脂肪族直鎖アルコールは洗剤や可塑剤として利用され、例えば1-ブタノールは年間約300万トンが合成されている。通常、このような脂肪族直鎖アルコールは、炭素原子の一つ少ないアルケンに対する直鎖選択的ヒドロホルミル化反応によるアルデヒド合成と、続くアルデヒドの水素化反応により二段階で合成されている。この二段階反応を一段階にすることができれば、プラント数を減らすことができるため、大規模なエネルギー削減が可能になる。我々は最近、二種の異なるRh触媒とRu触媒の存在下、アルケンと水素と一酸化炭素から一段階で選択的に直鎖アルコールを合成できることを見いだした。論文発表当時では一段階直鎖アルコール合成法として最高の値である。


1) Takahashi, K.; Yamashita, M.; Ichihara, T.; Nakano, K.; Nozaki, K. Angew. Chem. Int. Ed., 2010,49, 4488-4490. doi.
2) Takahashi, K.; Yamashita, M.; Tanaka, Y.; Nozaki, K. Angew. Chem. Int. Ed. 2012, 51, 4383-4387.   doi